自然の風景を切り取ったかのような、心地よい佇まい。近年、多くの人々を魅了している「雑木の庭」は、ただ樹木を植えるだけではその魅力を最大限に引き出すことはできません。ともすれば、手入れの行き届いていない乱雑な印象を与えてしまうことも。
本記事では、洗練された「おしゃれな雑木の庭」を実現するために不可欠な、専門家視点でのポイントを深く掘り下げて解説します。見た目の美しさだけでなく、植物が健やかに育ち、四季の移ろいを心から楽しめるような庭づくりの本質に迫ります。
雑木の庭とは?その魅力と基本を理解する

おしゃれな庭づくりを始める前に、まずは「雑木の庭」がどのようなものか、その定義と人々を惹きつける魅力を正しく理解することが重要です。
雑木の庭の定義
雑木の庭とは、特定の樹種に偏らず、まるで里山や自然の林のような風景を再現した庭のスタイルを指します。主に、その土地の気候風土に合った、自然な樹形の落葉広葉樹を中心に構成されます。人工的な整形を極力避け、木々が本来持つ枝ぶりや幹の美しさを活かすのが特徴です。完璧に作り込むのではなく、風や光、影といった自然の要素が主役となる、有機的な空間を目指します。
なぜ人々は雑木の庭に惹かれるのか
雑木の庭が持つ最大の魅力は、その「四季の移ろい」にあります。春には芽吹き、夏には深い緑が木陰を作り、秋には紅葉、冬には葉を落とした幹や枝の繊細なシルエットが姿を現します。この変化が、日々の暮らしに潤いと感動を与えてくれます。
また、木漏れ日が揺れる様子や、風にそよぐ葉音、雨に濡れた葉の輝きなど、五感で自然を感じられる癒やしの効果も大きな魅力です。鳥や蝶が訪れる小さな生態系が生まれ、都会にいながらにして自然とのつながりを取り戻すことができます。
おしゃれな雑木の庭を実現する7つの重要ポイント
ここからは、雑木の庭を「ただの植え込み」から「洗練された空間」へと昇華させるための、具体的な7つのポイントを解説します。
1. 「抜け感」と「奥行き」を生む樹木の高低差
おしゃれな雑木の庭の基本は、空間の立体感です。庭の背景となる「高木」、視線の中心となる「中木」、そして足元を引き締める「低木」をリズミカルに配置することで、視線が抜ける「抜け感」と、庭が広く見える「奥行き」が生まれます。すべての木を同じ高さで揃えるのではなく、高低差を意識的に作ることが、単調さをなくすための最初のポイントです。
2. 落葉樹と常緑樹の絶妙なバランス
雑木の庭の主役は落葉樹ですが、常緑樹の役割も非常に重要です。落葉樹が葉を落とす冬場に庭が寂しくなりすぎないよう、背景や視線を遮りたい場所に常緑樹を配置します。一般的に「落葉樹7:常緑樹3」程度の割合が美しいとされています。常緑樹があることで、落葉樹の繊細な冬の枝ぶりがより一層引き立ちます。
3. 樹形と幹肌にこだわる樹種選び
葉の色や形だけでなく、樹木そのものの「姿」にこだわることが、プロとアマチュアの差がつくポイントです。すらりと伸びる幹、自然な曲線を描く枝ぶり、美しい模様を持つ幹肌など、樹形全体で選びましょう。例えば、アオダモのしなやかな樹形や、ヒメシャラの滑らかな赤褐色の幹肌は、それだけで庭の品格を高めてくれます。
4. 自然な配置「不等辺三角形」の法則
樹木を植える際、直線状や等間隔に並べるのは最も避けるべき配置です。自然界に直線は存在しません。3本、5本といった奇数本を一群とし、それぞれを頂点とする「不等辺三角形」を描くように配置すると、非常に自然なまとまりが生まれます。これにより、木々の間に心地よい「間(ま)」が生まれ、風や光が通り抜ける道ができます。
5. 光と影をデザインする
雑木の庭の美しさは、木々そのものだけでなく、それらが作り出す「光と影」によって完成します。特に「木漏れ日」は、雑木の庭を象徴する美しい現象です。どこに木を植えれば、リビングの窓やウッドデッキに美しい木漏れ日が落ちるのかを計算して配置します。影が落ちることで、庭に陰影と深みが生まれ、時間帯によって表情を変える魅力的な空間となります。
6. 下草とグラウンドカバーで足元を引き締める
高木や中木だけでは、庭はどこか未完成な印象になります。その足元を彩り、地面を覆う「下草」や「グラウンドカバー」が、庭全体の完成度を決定づける重要なポイントです。ギボウシやヒューケラ、シダ類などを組み合わせることで、林床の雰囲気が再現され、雑草の抑制にも繋がります。これにより、樹木と地面が自然につながり、一体感のある景色が生まれます。
7. 経年変化を楽しむ素材選び
植栽だけでなく、アプローチの石材やウッドデッキ、フェンスなどの素材選びも、庭の雰囲気を左右します。雑木の庭には、コンクリートやアルミといった人工的な素材よりも、自然石や木材、鉄など、時間と共に味わいを増していく「経年変化」を楽しめる素材が似合います。植物の成長と共に、これらの素材が風景に溶け込んでいく様も、雑木の庭の楽しみの一つです。
雑木の庭におすすめの樹木と下草
ここでは、おしゃれな雑木の庭によく用いられる、代表的な植物をいくつかご紹介します。
主役になる高木・中木
- アオダモ: 細い幹が株立ち状に伸び、軽やかで涼しげな印象。シンボルツリーとして人気。
- ソヨゴ: 風にそよぐ葉音が名前の由来。常緑でありながら重すぎず、冬に赤い実が楽しめる。
- ヤマボウシ: 初夏に白い花のような苞(ほう)が美しい。自然な樹形が魅力。
- イロハモミジ: 紅葉の美しさは格別。繊細な葉が木漏れ日を美しく演出する。
空間を彩る低木
- ドウダンツツジ: 春の白い壺状の花と、秋の燃えるような紅葉が見事。
- アジサイ: 和洋どちらの雰囲気にも合う。日陰でも花を咲かせる貴重な存在。
庭の完成度を高める下草・グラウンドカバー
- ギボウシ(ホスタ): 多彩な葉の色や模様が魅力。日陰の庭を明るく彩る。
- シダ類: 瑞々しい緑と繊細な葉の形が、林の中のような涼感を演出する。
- クリスマスローズ: 冬から早春にかけてうつむき加減に咲く花が、冬の庭に彩りを添える。
雑木の庭のメンテナンスとお手入れのポイント
「自然風の庭=手入れが不要」というわけではありません。美しい状態を維持するためには、適切なメンテナンスが不可欠です。
「何もしない」のではなく「自然に見えるように手を入れる」
雑木の庭のメンテナンスの基本思想は、これに尽きます。伸びすぎた枝や混み合った枝を抜き、風通しと日当たりを良くすることで、病害虫を防ぎ、樹木が本来持つ美しい樹形を保ちます。あくまで「自然の姿に戻してあげる」という感覚で行うことがポイントです。
剪定の基本:透かし剪定
枝を途中で切り詰めるのではなく、不要な枝を付け根から取り除く「透かし剪定」が基本です。これにより、木の骨格を美しく見せ、内部まで光が入るようになります。年に1〜2回、落葉期や新緑の時期に行うのが一般的です。
落ち葉は「恵み」。掃除しすぎないことも大切
秋の落ち葉は、庭の景観を彩るだけでなく、やがて腐葉土となって土を豊かにしてくれる貴重な資源です。アプローチや玄関先など、必要な場所だけを掃除し、木の根元などに集めておけば、冬の乾燥や寒さから植物を守るマルチング材としても機能します。
まとめ
おしゃれな雑木の庭づくりは、単に植物を植える作業ではなく、光や風、季節の移ろいといった自然の要素をいかに美しく取り入れるかを考える、創造的なプロセスです。今回ご紹介した「高低差」「バランス」「樹形」「配置」「光と影」「下草」「素材」という7つのポイントを意識することで、あなたの庭は、ただの木々の集まりから、日々の暮らしを豊かにする、生命力あふれる空間へと変わるはずです。
一つひとつの木々と向き合い、その成長を楽しみながら、時間をかけて自分だけの理想の雑木の庭を育てていく。それこそが、この庭づくりにおける最大の醍醐味と言えるでしょう。

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